5月はじめの新緑の季節、伏見稲荷大社と東福寺を訪れてみた。二つの社寺の間の距離は1.5kmほど。数ある京都の有名社寺の中では、隣同士と言ってもよい。超有名どころ。これらの社寺自体については多くの説明を要しないだろう。

おなじみ、伏見稲荷・千本鳥居
まずは伏見稲荷。比叡山から大文字山、八坂神社や清水寺の後背の山々を経て、伏見の桃山まで連なる東山連峰。その一角である稲荷山(標高233m)の山裾から山頂にかけて境内が展開している。楼門や本殿、観光客に人気の千本鳥居、おもかる石などは山裾に、山頂部には、この神社の原初といわれる上之社などの社が点在している。本殿、楼門、大鳥居の配置ラインは、稲荷山を背にして西向き、つまり傾斜の高い方から低い方を見下ろす形である。

楼門。奥に外拝殿、本殿

外拝殿。奥に本殿、その背後に稲荷山
さて、この伏見稲荷、行政区上は伏見区だが、元来の伏見の町にあるわけではない。伏見とは数kmの距離があり、歴史的に別の経緯で発展してきた深草地区にある。なのに、なぜ深草稲荷ではなく、伏見稲荷なのか。不思議に思っていたのだが、どうやら簡単な理由らしい。1946年までは、「伏見」を冠さず、単に稲荷神社だったそうだ。名が次第に全国区になるにつれ、どこの稲荷なのか明確にする必要が出て、伏見を冠するようになったとのこと。ローカルすぎる「深草」ではなく、より名の通っていた「伏見」を選んだようだ。

賑わい過ぎる参道
続いて東福寺。伏見稲荷が季節に関係なく観光客で溢れかえっているのに対して、新緑の時季、紅葉の名所の東福寺は静かだ。青もみじが映えて、私は好きだが。紅葉シーズンには、ここも人が溢れる。

臥雲橋から望む通天橋と青もみじ
東福寺も東山連峰の山裾に展開。三門から本堂へと続くラインは南北方向、つまり、この寺院は南向きに建てられている。傾斜の方向は伏見稲荷と同じく東西方向だが、土地の傾斜とは関係なく、南面することを優先して設計されたのは明かだ。私の観察では、社寺の多くは、傾斜の高い方から低い方を見下ろしているか、南向きか、の2パターンのどちらかである。どういう場合にどちらのパターンになるかという法則性はまだ発見できていない。神社と寺院による違いかといえば、そうでもない。同じく東山連峰の山裾にある八坂神社は南向き、清水寺は下を見下ろすパターンだ。

三門。南向き。奥に本堂。
京都の東寺に対して、かつて西寺があった。奈良の東大寺に対しては西大寺があった。では、東福寺に対して、西福寺もあったのかと考えた。どうやら、それはなかったようだ。東福寺の名は、東大寺と興福寺から一文字ずつ借用したものとのことだ。(実は西福寺という寺は京都に存在するが、命名の由来は東福寺と関係なく、東福寺と対で建立されたものでもない。)

本堂

本堂の天井に描かれた「蒼龍」(堂本印象・1933年作)
最後に、伏見稲荷と東福寺の最寄り鉄道について。伏見稲荷・東福寺の最寄り鉄道は、京阪電鉄とJR奈良線である。伏見稲荷の最寄り駅は京阪電鉄が伏見稲荷駅、JRは稲荷駅。京阪伏見稲荷駅は神社から数百mの距離があって、その間の道沿いには店が並び、観光客でごった返している。JR 稲荷駅は大鳥居と道路を挟んだ目の前。駅を出た客はそのまま神社へと吸い込まれていく。東福寺の最寄り駅は京阪・JR とも東福寺駅。寺から少し離れた所に両社の駅が平行して並ぶ。

京阪伏見稲荷駅

JR 稲荷駅は神社の目の前
京阪電鉄は、大阪と直結していて、この方面からのアクセスがよく、また、清水寺、祇園、平安神宮など京都の他の名所との周遊にも便利。一方のJR は京都駅発着だから新幹線や関空特急利用の観光客に利便性が高い。資料によれば、伏見稲荷でも東福寺でも、停車本数、乗降客数とも、JR に軍配が挙がっている。

東福寺駅。手前・京阪、奥・JR
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