地理学徒の語り

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石切神社

 河内国の一宮、枚岡神社を訪れた後、続いて和泉国の一宮へ行くつもりだったが、いかんせん、家を出るのが遅かった。そこまで行く時間が無くなったから、近くの石切神社へ向かうことにした。

 枚岡神社から車で10分程だ。標高は枚岡神社より少しだけ低い所にある。一般に神社は、傾斜地にある場合は上から下に向かって、平地の場合は南を向いて建っているように思う。枚岡神社は、西向きで、生駒山を背に大阪市街を見下ろすように建っていた。石切神社は、東西方向に傾斜がある(東側が高い)が、低い西側を見下ろすようには建っていない。本殿は南向きだ。

 本殿の裏(北)にある駐車場に車を停めた。裏側から回り込むように本殿の前に出ると、そこは大勢の参拝客で賑わっていた。本殿前に列ができるほどだ。まだ正月7日でもあり、初詣での人もいるのだろう。石切神社の方が枚岡神社よりも名が通っている印象を私は持っていた。やはり、枚岡神社が人影まばらで、静寂な空気が漂っていたのと対象的だ。

 この本殿前から三ノ鳥居を抜けて絵馬殿、二ノ鳥居へと南に続くラインが正規の参道だ。しかし、ここから参詣する人は少ないようだ。ちらほらと人を見る程度である。三の鳥居の所で正規の参道を東西に横切る道があって、ここが歩行者で混み合っている。特に東側は、狭い上り坂の両側に、土産物屋、食べ物屋や占いの館などが軒を連ねている。こちらがメインの参道になっているようだ。

 商店を眺めながら、この道を歩いてみることにした。思った以上に距離がある。延々と上り坂に商店が続いている。それはそうと、こうした傾斜地の参道商店街は、神社に向かって上り坂になっているのが一般的だと思う。しかし、ここの場合は、神社に向かって下っているのである。この点で不思議な参道を、どこまで続くのかなと思いながら上って行った。ようやく商店街が終わった所で、近鉄電車の線路に突き当たった。左に少し行けば石切駅がある。これで謎が解けた。参詣者の多くは、近鉄石切駅まで来て、参道商店街を下って石切神社に行くのである。

 近鉄奈良線が開業したのは1914年のことである。神社の最寄り駅となる石切駅は神社の東、神社よりも高い所に設けられた。多くの参詣者が駅と神社の間の坂道を行き来するようになり、やがて商店が立ち並ぶようになったというわけだ。参道商店街を下って参拝する神社。かなり特徴的だと思う。

 なお、石切神社には、ちゃんと参道を上って到達する社もある。石切神社上ノ社である。こちらは、先ほどの参道商店街を抜けた所で線路の下を潜り、そのまま坂を上って行った所にある。つまり、駅よりも高い所にある。しかしながら、駅から坂を上ってそこまで行く人は少ないようだ。私が行った時は誰もいなかった。坂道は下って行く方が楽ですから。