地理学徒の語り

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宗教都市・天理(奈良県)

 奈良盆地の東縁の真ん中あたりに天理の市街が広がっている。この天理市街の一帯は、元々は丹波市(たんばいち)という小さな町だった。1954年、この丹波市町と周辺の村が合併して市となる際に、市名として採用したのが、天理である。その名の由来は、天理教。江戸末期にこの地で発祥した、仏教でも神道でもない独自新興宗教で、信者数では大勢力に発展している。全国各地で地区教会を見かけるから、知らない人の方が少なかろう。市発足時点で既にこの地に宗教本部の諸施設があり、いわばその門前町のようになっていたから、市名に採用されたのだろう。特定の宗教名に由来する市町村名は、私は他には知らない。

 JR天理駅の正面に、天理本通というアーケード街の入口がある。このアーケード街は延々1km続いて、抜けた所に天理教本部がある。人口6万程の街にこの規模のアーケード街が成り立つのは、天理教本部への参詣者のおかげである。駅から本部に近づくにつれ、法被など天理教関連グッズや土産物屋、食堂など参詣者向けの店が並び、まさに参詣道商店街の様相になってくる。

 天理教本部には、天理教の神を祀った神殿、教祖が宿るとされる教祖殿などがあって、ここに参拝すること(「おぢばがえり」といわれている。)が信者のつとめとなっているため、全国の信者が天理の街に訪れて来る。本部の周囲の他、市街のあちこちに「詰め所」といわれる本部に参拝に来た信者のための宿泊施設がいくつもある。

天理教本部・神殿

詰め所

 また、天理には大学がある。天理大学天理教の海外布教師のための語学学校が起源。天理小・中・高等学校もある。「参考館」という資料館や大学図書館は一般利用可能。競技場、野球場、ホッケー場など立派なスポーツ施設もあり、天理大、天理高の運動部の活動だけでなく、一般の大会にも利用される。街の学術・文教施設の面でも天理教が貢献している。

天理大学

参考館

 神殿など宗教施設、信者宿泊施設、大学施設などが広い範囲に建ち並び、天理教関連施設で市街が形成されていると言ってもよいほどだ。これらの施設はどれも、独特の外観で、建物自体も見る価値がある。これらの建物が創り出す景観は、仏教寺院や神社のそれとは異なる街の雰囲気を醸し出している。

広大な天理教本部 
左・教祖殿、右・神殿

別席場
宗教講話を授かる施設

詰め所

 天理本通の小さな食堂のおばさんがこう言った。昔は、家族親戚、アルバイトで切り盛りしても大忙しだった。店に入りきれないほどお客さんが来た。だんだん少なくなったところで、コロナで参拝の信者さんが減って回復しないと。他の地方都市のシャッター通りに比べたら随分とましだが、確かにアーケード街は賑わっているとは言えない。

天理本通

 全国各地で、著名な仏教寺院や神社が多くの参詣者で賑わい、一帯が観光地として繁栄している所は数多い。これらの参詣者は、信者も含まれるが、一般の観光客が大半だ。だが、天理の場合は、本部への参詣者は信者が多くを占めるように感じる。天理教関連施設の建物は一見の価値があるし、それらの建物群が創る景観は観光資源になると私は思う。信者の参詣が減っているなら、一般の観光客を積極的に呼び込むことを考えたらどうだろうか。

JR天理駅構内
参詣信者への歓送の言葉が並ぶ

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