地理学徒の語り

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綾部(京都府)

 綾部に行ってきた。京都府丹波地方の街である。丹波山地に源を発して若狭湾に注ぐ由良川。その中流に開けた盆地の東端に市街が広がっている。由良川は中下流域の流れが緩やかなのが特徴で、綾部付近で河口から約50km遡上しているが、川面の海抜は30数mである。それゆえ、洪水を起こしやすい一方、舟運に適した。綾部市内の高津には、古代に川湊があったといわれる。

東方から望む綾部市

市街付近の由良川

 この街は、明治期の殖産興業で勃興した養蚕・製糸業で発展した。当時の何鹿郡(現綾部市)の採るべき策を意味する「郡是(ぐんぜ)」製糸株式会社が創業、会社の発展とともに街は歩んできた。郡是製糸は現在の繊維大手「グンゼ」である。今も綾部本社がここに置かれ、工場も操業している。

グンゼ綾部本社

 市街の北側に広がるグンゼ創業の地は、会社及び街の歴史顕彰ゾーンになっている。会社と市が共同して開発した観光エリアだ。旧本社の社屋や繭蔵など100年以上の歴史を持つ建物が、博物館などになって往時を偲ばせ、バラ園が彩りを添えている。

グンゼ記念館(旧本社屋)

グンゼスクエア・グンゼ博物苑

 もうひとつ、この街を特徴づけるものがある。大本教だ。明治期に綾部で発祥した神道系の新宗教である。弾圧など困難な歴史も経て、今や全国に10万を超える信徒がいるとのこと。現在まで綾部で広大な敷地に本部を構えている。本部敷地内に建つ神殿の建物は建築物として価値のあるものとなっている。

長生殿

みろく殿

 繊維産業の最盛期には大いに賑わった街。映画館もあり歓楽街もあった。かつての賑わい、今や見る影もない市街の通りを歩いて、綾部駅にたどり着いた。この駅は、京都から丹波地方を縦断し山陰方面に通じるJR山陰本線と、そこから分岐して舞鶴に向かう舞鶴線の結節点になっている。

かつてメインストリートとして賑わった西町通り

JR綾部駅

 駅に着いた時、ちょうど、京都から山陰本線を来た特急が到着したところだった。この駅で車両切り離しをして、一部は特急「まいづる」として舞鶴へ、残りは特急「きのさき」として山陰本線を直行、福知山を経て兵庫県城崎温泉へ向かう。鉄道運行に多くの人手を要した時代には、機関車付け替えなどがあって、綾部にかなりの数の鉄道関係者がいたそうだ。今ではものの数分で切り離しは完了して、列車は去って行く。

綾部駅停車中の特急「きのさき・まいづる」(Jリーグ京都サンガと地域観光機構のコラボ特別塗装)

分岐する山陰本線(京都方面)(右)と舞鶴線(左)